完璧な形でグース・マークを再現せよ!

グース・マーク復刻プロジェクトがひそかに立ち上がって約10カ月。幾多の困難を乗り越え、世界中で誰もが成しえなかった再現度を伴って、遂にあのグース・マークが甦った!
が、その製作過程は決して容易な道程ではなかった。

ここでは今回発表のグース・マークの解析・考証の経過を、詳細に渡ってレポートしてみたいと思う。

PHASE1

そもそも、この程度のものからマークの全貌を掴むことは無理だった。色合いやおおまかなシルエットこそ判別できるものの、これではほとんどイメージで補完しなければならない事は明白。当然ながら、他に資料と呼べるものはない。
しかし、イメージ・デザインを作るのがこの計画の目的ではない。ジム・グースに憧れる男たちのイコン、それがこのマークなのだ。これまで謎に包まれていたこのマークの全貌を説き明かした上で、立派なデザインとしてまとめあげなければ計画自体に意味がない!
標なき無謀なチャレンジはスタートしたが、はなから大きな壁にぶちあたり、作業は遅々として進まなかった…。


PHASE2

米版のスペシャルエディションDVDが最後の頼みの綱だった。が、納得のいく再生&解析環境を整えるまでに多大な時間を要した。このタイムロスは大きかったが、喜ばしい事に、収穫はそれに見合うものだった。
色調やコントラストをいじりたおし、画像の解析 が進む中、驚くべき発見がいくつも出てきた。が、解析したものを単にトレスするだけでは、マークは完成しない。何せ、不明瞭な箇所は多数あるのだ。
プロジェクトはようやくスタートラインに立ったに過ぎなかったが、それでも前途には一筋の光明が見えてきたという感じだった。


画像1:真正面

グース・マーク解析レポート

不明箇所はあるものの、現段階でこれ以上の資料は望めない。が、この各アングル映像だけでも、多くの新事実を雄弁に語っている。
その全貌をここに公開する!!

■飛行帽

カモのかぶりものは、耳部分にレシーバーらしきものがある上、かすかな縫い目(ここにアップした画像では少し確認しづらい)が判別できる。かぶりものは、まず間違いなく飛行帽だと言える。

■サングラス?ゴーグル?

目はゴーグルと判断せざるを得ない。サングラス的な印象もあったが、左部分をよく観るとツルが一本出ているのではなく、2本の線、すなわちベルト状のものが耳へ向かっているのがはっきり確認できる。そもそも飛行帽をかぶっているのだから、ゴーグルとくるのは当然だ。
が、ベルトが耳で途切れている上、ゴーグルの形自体もかなりあやふやだ。これは後にデザイン的な大きな難関として立ちはだかる事になる…。

■首下の黒いスジ

首部分から、OとSの間に延びている黒いライン。当初はデザイン的に理解不能で、お手上げな部分の筆頭となっていたが、飛行帽、ゴーグルとくれば、パイロットのネクタイという推論がやにわ現実味を帯びてくる。状況証拠という形ではあるが、この黒いスジをネクタイと解釈する事にした。

■くちばし

カモの口は捉えようによっては、少々イビツだが、開いているように見えてしまう。これは一体?…。数カ月もの間疑問は解消できなかったが、ある時気づいた。「これは口にくわえたタバコかもしれない!」
かくして、拡大した動画映像で何度も確認した結果、くちばしにタバコをくわえていると結論するに至った。
この3アングル画像の比較だけでも、タバコ説は十分納得していただけると思う。

■マフラー

シルエットは明確に掴める。が、残念ながら細部ははっきりしない。特に左端の折り返し部分はデザイン的にアレンジを加えるべき箇所だ。

■マークのカラー

再背面の円は黒。中の円は白。くちばし、マフラーのイエローは、最も精彩な画像3を参照にする限り、少々オレンジがかっている。そして飛行帽は真っ赤である。この赤の色合い次第でマークの印象が大きく変わってしまうので、色味の設定は慎重に行わねばならない。

■マークの仕様

オリジナルのマークは、必要枚数分だけ(5枚程度)スタッフのハンドペイントによって量産されたものであり、透明フィルムを上からかぶせてカウルに貼りつけていた、と結論づけた。今よりも簡便にカラー画像を複写する方法がなかった映画製作当時(70年代末期)の状況、低予算映画であったという事を考え併せると、妥当な見解だと考えている。

画像2:右より
画像3:左より

■[JIM GOOSE]文字の謎

上の3枚のショットからまず確認できた事は、上段、「J」と「I」それぞれの上に明らかに点が存在していることだ。そして「G」は左下に、大きなハネが確認できるため、筆記体大文字と解釈するしかない。これにより、JIM GOOSEの文字に関して、我々が抱いていた『活字体の大文字である』という先入観が、完全否定された。
その流れから冷静に各文字ごとに検証してみると、追い打ちをかけるように、なんとも奇妙な事実があぶりだされてきた。

間違いなく異常な書式である。もしも「J」と「I」の上に点が見えなければ、「G」だけが筆記体大文字で、残りは活字体の大文字という事になり、十分納得できる書式となる。が、見えてしまうものは仕方がない。『点はシールの気泡ではないか?』との考えもあるが、ここまで奇麗に「J」「I」の上に乗っかっていれば、やはり意図されて描画されたモノと捉えざるを得ないだろう。
考えられるのは、マークを製作したスタッフのクセ字説だ。我々日本人はセオリーに忠実な英語を学ばされる。が、実際にそれを用いて生活している英語圏の人が、必ずしもセオリーに忠実であるかと考えると、ノーである。そもそも我々にしてからが、日本語の書き順違い、ひどいクセ字を恒常的に用いている。
よって、文字に関しては、下手にアレンジすることなく、見えるままデザイン化する事とした。活字体大文字で統一すれば、さぞやすっきりするだろうとは思ったが、この一筋縄ではいかないあやふやさが、このマークの魅力でもあるのだ。


こうして判明した事実をまとめたものが上図である。これを下敷きに、いよいよグース・マークの本格的な復元作業は開始された。しかし見れば見るほど、趣のあるデザインである。こんなものがさりげなくバイクに貼られているのだ。MMという作品が、いかにディテールの妙を練り込んだ作品であるかという事実を、身をもって思い知った次第だ。

PHASE3

文字のアレンジ、ゴーグルの処理、マフラーの折り返しetc…。ディテールの詳細な解釈をひとつづつ潰していく作業が行われた。4本のラインの切り口を同一方向にそろえたり、「G」にかぶったラインを下に敷いたりと、あえてデザイン的に改変した箇所も少し出た。
が、基本的にはオリジナルの線から逸脱すると、いきなり違うものになってしまうのがこのグース・マークだ。実に微妙なバランスの上に成り立っている、まったくもってデザイナー泣かせである。また、我々はあまりにもこのマークを見過ぎたため、逆にアレンジが施しづらい状況にも陥った。
そして、おびただしい数のデザインが試されては闇に消えていった…。

 → →
そんな作業は数カ月にも渡って行われた。スタッフ間を飛び交う没デザインと、指摘を記したメールの数々。その甲斐あって、ようやくマークは形になってきた。
陰影を付け、立体的な表現を盛り込んだ事により、かなりオリジナルのイメージに忠実なものが見えてきた。右の画像を見比べて欲しい。途中経過ではあるが、再現度はかなり高いと自負できるレベルになってきた。こうして、プロジェクトはいよいよ大詰めを迎えた。


PHASE4

もうこれで完成だ。
そんな事を言った舌の根も乾かぬうちから、次の指摘事項が挙がる。
「E」は筆記体の方がしっくりくる…。
「M」の右下の足はもっと内側へ入り込んでいるのでは…。
重箱の隅をつつくような修正が果てしなく加えられた。

そして、2002年10月某日。
遂にグース・マーク復刻は本当の本当に完了した。
オリジナルのラインを崩さず、かつデザイン的な見栄えを考えてアレンジするという難行…。
それがこのような形で結実するとは、正直プロジェクト発足当時には誰も想像していなかった。

まだまだ不明な箇所が残るグース・マークであったが、もしもこの先、何かに拍子にオリジナルの精細映像が発見されたとして、両者を並べたとき、一体どういう結果となるだろう?
ひょっとして我々のマークの方が、見栄えする部分もあるのではなかろうか?
そんな心の声は、決して傲りの感情から出たものではない。

ファンの誰しもに納得してもらう事を目指し、デザインを生業とするMM狂いな人間が複数関り、長い時間をかけて念入りに作成したのがこのマークだ。
映画の小道具として作られたオリジナルのマークを凌駕する部分があって当然と言えば当然だ。
だから、我々は自分らの職人としてのプライドをかけて断言する。

「このグース・マークは世界一である」と。

2002.11.19 文:シラトモ




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