<小説>
狼たちの曠野 高千穂遥 著
集英社文庫 (絶版)


文庫自体は絶版ですが、電子出版パピレスというところで購入可能という事が判明しました。
テキストデータのDLという形になります。読めればいいや、という方にはお勧めかも。


 おおっと、いきなり「マッドマックス2」な感じで迫る、生頼範義イラスト!これはなんだかヤバげな感じだ!
  以外と知られていない中編SFバイクアクション小説がこれ。「クラッシャー・ジョウ」の高千穂遥が、二輪免許とって嬉しかったから書いたような小説で、良くも悪くもバイクおたくの妄想じみた世界が展開される。
 時代設定も場所も不明の荒野が舞台。世界は馬賊を思わせる略奪バイカー“ゾク”と、田畑をたがやす“村”で成り立っている。友人の裏切りでゾクを追放された主人公エイキラが、調子の悪いGT380でRZ350に追われたり、XL500で悪の大軍団にぬかるみバトルを挑んだり、裏切った元友人の乗るXJ750をZ750FXで追いかける、といった内容で、おそらくここまで実車名を連呼したSF小説は他にあるまい。
  ゾクが乗るバイクは、荒野の各所に点在する「カワサキ」「ヤマハ」「ホンダ」「スズキ」のマークを記した神殿と呼ばれるところから、人間ひとりに対して、1台だけ機械を介して提供されるという設定で、なにか悪い夢を観せられているかのようだ。しかしこのなんとも妄想チックな設定を許容できれば、なかなかに楽しめるだろう。 またあっという間に読めてしまうのも本書の魅力である。
 この小説がSFマガジンに初出したのが、80年代初頭。よって、その当時の最新バイクがばんばん登場するのだが、それが今となっては中古市場におけるプレミア車多数という事で、今、まったく同じ内容の小説を書いたら、そのバイクのチョイスには、狙いすぎというブーイングが飛ぶだろう。それほどに懐かしバイクがごくごくナチュラルに登場するため、ある種、タイムスリップにも似た感じが体験できるというのがまたいい。私は初出時に読んだのだが、今回再読した方が、全然楽しめた。 
 作品自体は「マッドマックス2」の前に書かれたものという事を考えれば、高千穂遥版「ロードウォリアー」であり、そのイマジネーション力も捨てたものではないな、と少し感心もする。内容とカバーアートからすると、再評価されてもいいかなと思って今回は紹介した次第だ。
 現在絶版だが、中古本屋で探せば簡単にみつかるように思う。私はこの稿を書くためにオークションで300円で落札できた。

 

ちなみにこちらはお馴染、生頼画伯が書いた「マッドマックス2」の日本国内向けのイラスト。画伯は気合いの入った時と力を抜いた時の、絵の緻密さに極端に差が出てしまう。やはり映画がらみの仕事はスケジュールやギャラの事もあるだろうが、気合い満点。マックスのイラストの中でも間違いなく最強の格好良さを誇る力作だ。これの高額なリトグラフが発売されたら、マジで考えてしまうのは私だけか?
 この生頼タッチは世界的にも認められており、ルーカスが気に入って「スターウォーズ帝国の逆襲」の全世界共通ポスターに起用、その後もスピルバーグ製作の「グーニーズ」のポスターアートを担当している。
  日本国内では 小説の表紙、ゴジラ映画のポスターなどで有名。小説は特に「幻魔大戦」をはじめとする、平井和正作品のカバーアートを無数に手掛けた。最近はセミリタイアのような感じで仕事をあまりしていない。私は熱烈に尊敬する不世出の天才画師である。

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